アリィ
「あ、アリ……有田さんが……」
私はたぶん、そうとう青い顔をしているに違いない。
まともに口も動かない。
でも麻生先生は私の気持ちをくみ取ってくれたようで、私がアリィの友達であることを五十嵐先生に説明してくれた。
「心配で見に来てくれたのよね?」
しかし、五十嵐先生は。
「誰であろうと関係ない。聞き耳立てるようなマネはやめて早く帰りなさい」
と吐き捨てて、ドアを閉めてしまった。
閉め出されてしまった。
私は、関係ないそうだ。
少しだけうかがい知れたアリィの表情は、ずっと険しかった。
すぐ元に戻ると思っていたのに。
諭すどころか、まともに顔を合わせることもできない。
もう、何もできない。
とぼとぼと歩き出すと、右の上靴の裏に石がはさまっているのに気づいた。
踏み出す度に、足の裏に違和感が走る。
でも、それをどうにかする気さえ起きなかった。
ただただ、薄汚れたピンクのクマのことだけが、頭にこびりついていた。