アリィ
ひとりフルーツバスケット
いつもののり弁を、レンジで温める。
温め完了のブザーが鳴り響く。
のろのろとのり弁を取り出して、テーブルに置いた。
静かだ。
私が物音を立てなければ、ただひたすら無音が充満している。
いつものことなのに、なぜだか今日はいたたまれなかった。
そうだ、テレビをつけてみよう。
もうずいぶん長いこと起動されることのなかった我が家のテレビ。
きちんと動くかどうか不安だったけれど、スイッチを押せば虫の羽音のような音を出して、ちゃんと映像を映し出した。
チャンネルをころころ変えてみる。
特になにも感じ入る番組がなかったので、適当なバラエティを垂れ流していることにした。
のり弁をつつきながら、ぼうっと画面を眺める。
やたらと笑い声ばかり聞こえてくるのに、全然面白くない。
芸人のギャグは、ギャグとも思えない、むしろ不快さが募るものばかり。
これをクラスメート達は楽しそうに真似をして、面白い面白いと喜んでいるんだ。
グループのみんなと話を合わせるために必死だったころを思い出す。
そもそも感性が違いすぎた。
そりゃあ、一緒にいて話が合うはずがない。
当時は私ばかりがしんどくて不公平だと思っていたが、楽しい話題に水を差されてばかりだったあのグループのみんなも、
実は大変なストレスを感じていたんだろう。
「後藤さんってすごく変で、みんな嫌がってたらしいよ」
今朝の女子達の会話には傷ついたけれど、同じくらい申し訳ない気持ちでいっぱいになった。