アリィ
手紙
集中治療室から一般病棟に移って半月が経った。
贅沢にも個室をあてがってもらっている。
傷はまだ癒えない。
あちこち砕けてつぶれた骨は、あと何回か手術をしないと元に戻らないらしい。
それでもなんとか上半身を起こせるくらいにはなった。
ここ数日でやっと食事が固形物で出てくるようになった。
でも、私はそれを口にしたいとは思えないでいる。
「由紀子、今日はいい天気だぞ」
今日も面会開始時間ぴったりに、父が病室にやって来た。
カーテンを開けて、にこにこと笑いかけてくる。
父は私が入院して以来、毎日見舞いに来ていて、一日中病室にいる。
そして面会時間が終わると帰っていく。
毎日、毎日。
特に何をするわけでもなく、ろくに返事もしない私に話しかけて、ずっと穏やかに笑っているのだ。
ぱりっとしたスーツ姿は影をひそめ、よれよれのトレーナーに無精ひげのおまけつき。
白髪もずいぶん増えた。
仕事は、やめたのかもしれない。