アリィ
それから間もなくやって来たのは、学校の教頭と麻生先生だった。
こちらの方々も、病室へお通しすることなくお帰りいただいた。
麻生先生は傷ついていると思う。
でも、謝る気持ちさえ湧いてこない。
あの日に私のすべては終わってしまったも同然で、今この日々は、成虫が土へもぐり幼虫に返って眠り続けているようなもの。
私はふたたび地上を、世間を知ることはないし、もちろん学校へ戻ることもない。
だから、もう何をしても無駄なのだ。
そうやって追い返しているのに、麻生先生はちょくちょく病院に顔を出すらしい。
「本当にお会いしなくていいのか?」
父は何度も説得してくるけれど、私の気持ちは変わらない。
まだあの世界、あの過去につながっていると思うと、それこそ死んでしまいたくなる。
忘れたい。
全部、全部、忘れてしまいたい。
「そうね、今はすべてを忘れて心も体も休まなきゃいけないときなのよ」
と仏様のような顔で笑うこの女性は、この病院のカウンセラー。
週に一度やってきて、親しげに話して、私の言葉を引き出そうとしてくる。
この時間は苦痛だ。
私が人間的な生活を取り戻すために、この『治療』が必要不可欠なのは分かる。
でも私は、どんな未来も望んでいないのだ。
壊れた体が人の手を加えられて元に戻されていく。
ただ、それだけの毎日。