アリィ
うつらうつら、夢とうつつの境をさまよっていたら、ドアの開く音で目が覚めた。
父は、いまだ硬い表情のまま、私の傍までやって来た。
「今日はな、麻生先生、友達からの手紙を持って来てくれたぞ」
友達。
私の目は、かっと大きく開いた。
「ほら、ここ置いておくから」
毛布がかかったお腹の上にピンク色の封筒が乗せられる。
「喉が渇いたな。売店に行ってくる」
そして父は有無を言わさぬ速さでふたたび病室から姿を消した。
このお膳立てされた孤独の意味を、悟らない私ではない。
でも、なかなか動けなかった。
それはケガをしているとか、点滴中であるとか、そういった身体的な障害を上回る緊張がこの体を金縛りにしたからだ。
友達。
頭の中から意識的に排除し続けてきた言葉。
それは恐ろしい響きのする言葉。
とてつもない痛みをともなう言葉。
でも、いつも、いつも、求めていたもの。