アリィ
封筒には何も書いていなかった。
私は痛みに耐えながらゆっくりと上体を起こすと、まだ当分不自由を強いられるであろう手で、懸命に封筒を開けた。
恐怖と焦燥。
そこに消え入りそうなほどの何かがきらめくから、それを反射的に叩きのめす。
もう、こんな感情は持たないと決めていたのに。
それでも、開いた便せんに並ぶ見慣れた文字を見た瞬間、それはまぎれもない『期待』という形となって私の胸で暴れ出した。
この字は、この丸々とした字は。
アリィだ。