アリィ

みんな私を憐れむような顔をしようとしていたが、内心大喜びしていることは隠しきれていなかった。


当然だ、これで自分たちは『イケニエ』にならずに済むのだから。


私は嫌がろうとした。


アリィなんかとずっと一緒にいるなんて『金魚のフン』以上に苦痛で、それならずっと一人でいたほうがマシだとさえ思った。


でも『イケニエ』からの解放に歓喜する教室内に私の発言権などあるはずもない。


ここで「ノー」と言えば、針のむしろにされることは必然。


事はまるで自然に流され、私はアリィの『親友』となった。




それからクラスは平和になった。


毎朝、始業のチャイムが鳴るまで教室に女子が一人もいない、なんて異常事態も起こらなくなった。


アリィという存在が生み出すいらだちを受け止めなくてもよくなったおかげで、いたって穏やかな毎日。


クラスは、実に平和になった……私の心の平穏と引き換えに。




しかし、そんな私の苦労もこの四月で終わりだと思っていた。


二年生へと進級するにともなって行われるクラス替え。


これでアリィと離れられる、私は救われる、と信じていた。


その希望が見事に打ち砕かれたのは、つい一ケ月前のこと。


神様のいたずらなのか、私は今もアリィと一緒にいる。

< 22 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop