アリィ
おとなとこども
帰りの道すがら、いつものコンビニに立ち寄る。
校則では登下校時の寄り道は禁止されているが、毎日コンビニで夕食を調達しなければならない私は、そんな決まりなど面倒で守っていられない。
それに、たとえ学校に寄り道がバレたとしても、私は日頃の行いがよろしいので、
たいしたおとがめはないだろう、という甘えた自信もある。
駐車場が広くて歩道から店舗までに退屈な距離があるいつものコンビニへ、私は少しも遠慮することなく立ち入った。
「いらっしゃいませ」
客の来店を知らせるブザー音を聞いて反射的にあいさつをした店員たちは、
私を見てわずかに静止し、また何もなかったかのように各々の仕事を始めた。
「今日も意味深な常連がやってきた」、そんな顔をしている。
毎日決まった時間に二人分の弁当を買っていく、どんよりとした中学生。
幸薄そうで、愛想も悪くて、店員が避けたくなるのもしかたのないことだ。
どうぞ、なんとでも思ってくださいな。
開き直りながら、レジにいつもと同じのり弁を二つ差し出した。
パートだと思われるそのおばさん店員は、いかにも中年らしい肉のついた太い指でレジを打ち、
そして高音から低音へ急降下する妙なイントネーションで尋ねてきた。
「こちら温めますか?」
私は「いいえ」と答える。
毎日断っているんだから、いい加減覚えてほしい。
仕返ししてやりたくなって、おつりを取り損ねたふりをして小銭を盛大にまき散らしてやった。
こぼれた金属が、店内に流れている有線より華やかな音色を奏でる。