アリィ
第二章
悪夢、のち悪夢
学校からの帰り道。
大きなマスクをつけ黒いロングコートを着た、いかにも怪しい男が突然追いかけてきた。
周りには誰もいない。
通学路は車の多い大きな道路に沿っているので、人がいないときなどあるはずないのに。
私は必死に逃げた。
一歩足を踏み出すたびに、長い制服のスカートが膝に蹴られ、ばさばさと悲鳴をあげる。
振り向いて男の姿を確認しようとするが、帽子に隠された目は見えず、表情はつかめない。
ただ、命よりも貞操の危機を感じた。
逃げなければ、逃げなければ……
走っているうちに、だんだん足が動かなくなってきた。
体力の限界ではない。
第三者から操られているような、水の中にいるような、ものすごい抵抗がかかってくるのだ。
男との距離は確実に縮まってきているので、思うように動かない足がもどかしくて腹立たしくて、でもあせればあせるほど足は絡まる。
じれったくてしかたない。