アリィ
こういうときに限って、いつもは通らない道に入ってしまう心理の不思議。
見たこともない、ここはどこだろう。
草や木が生い茂っていて、人が一人やっと通れるくらいの道幅しかない。
心細さで足はますます動かなくなってきた。
必要以上の荷重に息が切れて、苦しくて、もう走れない……そう諦めた瞬間に、男の手が私の手首をつかんだ。
私は地面に叩きつけられ、男はその上にまたがってくる。
やはり男の目は見えない。
私はアヒルのような声で暴れるが、男はびくともしない。
不快しかもたらさない、その体温、その重み。
男は抵抗する私をあざわらうかのように肩を揺らすと、ポケットからなにか光るものを取り出した。
それがピストルだと、気づいたときには轟音が耳をつんざいて、弾丸はこの腹に撃ちこまれていた。……