アリィ
丁度真ん中あたりに、どろりと赤茶色の染み。
さあっと血の気が引く。
どこから出ているのだろう。
素手で股を探ってみる。
ぬるり、指先が突き止めたのは、今までその存在すら意識したことのなかった場所だった。
そして私はようやく理解した。
初潮がきたのだ。
保健の授業で習っていたし、クラスメートもほとんどなっていて、私もいつくるのか待ち構えていたので、
この性徴に対する驚きはそれほどでもないし、大きな感慨もなかった。
ならばなぜあんなに慌てたのかといえば、病気になってしまったのではないかという不安にさいなまれたからだ。
母と同じ病気になってしまったのではないか、と。
なんて小心者。
そんなことあるはずないのに。
でも私にとって母がとある病で死んだという事実は、私と死をより身近なものにしている。
根拠はなくても、そう感じるのだ。
体に変化があるたびに、なにかと死を予感させられるのは疲れる。
憂鬱の種が、またひとつ。