アリィ
レジは混雑していた。
四台あるレジに、それぞれ四、五人は並んでいて、それはもう立派な人ごみだ。
私の大嫌いな人ごみ……でも耐えるしかない。
これがないと困るのだから。
気だるい空気にもまれていると、急に下着が気になってきた。
そういえば、家を出てからかれこれ三十分は経っている。
どうして私はベージュの綿パンなんてはいてきてしまったのだろう。
前にはあと二人並んでいる。
おばあちゃん、混んでるのは分かりきったことなんだから、お会計をいちいち小銭で出すのはやめてよ。
私は緊急事態なんだよ、自分のことばかりで周りがちっとも見えてない、見ようともしない、だから歳は取りたくないんだ。
あせりが怒りに変わってきた、そのとき。
下品な笑い声が自動ドアを押し開けた。
大人になりつつある、しかしまだ幼い男子の声、しかも大勢。
あまりの大音量に、みんなの視線がそちらへ集中する。
私の視線も同じように声のするほうへ向けられたが、その姿を確認したとたん、体が硬直した。
声の犯人は、私と同じ中学、同じ学年のサッカー部御一行様だったのだ。
その中にはクラスメートの顔も見受けられる。
どうやら練習帰りにシップやテーピングなどを買いに来たらしい。
奴らは若さゆえの慢心に加え、集団になることによってさらに気が大きくなっているので、好き放題、大騒ぎ。
それに汗臭さもあいまって、店内にいる人たちはみんな迷惑そうに眉をひそめている。