アリィ
私は手に持っている『モノ』を抱えてうつむいた。
よりによって、なぜ今ここで奴らと遭遇しなければならないのだ。
さっき恥という感情に疑問を持ったが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。
こんなものを買っているところなんて絶対に見られたくない、見られてはいけない。
もし見つかったら、学校でなんと言ってからかわれるだろう。
いや、直接言われることはなくても、きっと裏で何か言われるはずだ。
誰か、早く、早くここから逃がしてください。
奴らの声に背を向けて祈っていると、やっと私の番がきた。
商品と千円札を一緒に差し出して、会計が終わるのを待つ。
知らず知らずのうちに貧乏ゆすりなんてみっともないことをしていたので、あせる気持ちを抑えてじっとしていた。
「百十四円のお返しです」
店員の声に反応して顔を上げると、おつりを受け取り、さあトイレへ……と、袋詰めされた『モノ』を手に取ろうとして驚いた。
それは透明なビニール袋に無造作に詰めこまれ、中が丸見えだったのだ。
こういった類の商品は普通、中が見えないように配慮するのがマナー、常識ってもんじゃないの?
文句のひとつでも言ってやりたいが、そんな度胸はないので、精一杯に戸惑った顔で店員を見た。
レジのお姉さんは、まだまだ続くお客さんの列にすっかり冷静さを欠いてしまい、たどたどしい手つきで小銭をいじくっている。
どうやら、まだ研修中のようだ。
別に彼女の経験が浅いだとか、いま忙しいだとか、そんなの私には関係のないこと。
なのに、その必死な姿が痛々しくて声をかけられなかった。
私はしかたなく、サッカー少年たちから死角になっている道を探し、ビニール越しに透けたものを抱えてトイレに駆けこんだ。