アリィ
「今夜は遅くなる」、父がそう言っていたのを思い出したので、たまには豪華な夕食を買って帰ろうと思い立った。
これは、昨夜の父の心ない言葉へのいい当てつけになるだろう。
私は向かいにあるデパートへ行こうと決めた。
ドラッグストアを出ると、あのサッカー部御一行様が店の軒下で、
そろいもそろってしゃがみこみ、買ったばかりのお菓子を食べ散らかしていた。
あまりの常識のなさ、見苦しさに思わず立ち止まると、ひとりが私の視線に気づいたのかこちらを振り向いた。
髪の毛を漫画みたいにツンツン立たせ、夏でもないのにこんがりと日焼けした、いかにもなサッカー少年。
そいつは、昨日の朝のホームルームで麻生先生にちゃちゃを入れていた、お調子者のクラスメートだった。
気まずい。
すぐに目をそらし、奴らに背中を向けて店の前の信号が青になるのを待った。
デパートに行くには、この横断歩道を渡るしかないのだ。
電光掲示板に表示されている待ち時間は、まだたっぷりあって気が滅入る。
視界がモノクロになっていく。
ただ、脳裏に焼きついたクラスメートだけは鮮明に色づいたままで、制服ではないダサい私服を着た私をあざ笑っている。
そんなわけない、それは被害妄想、あいつは私のことなんてこれっぽっちも気にかけてなどいない。
分かっているけれど、背後で笑い声が起きるたびに肩がすくむ。
だんだん持っているレジ袋の中まで見られているような気がしてきて、ついには、
私が生まれて初めて装用したそれがズボン越しに浮いて見えているのではないか……ということまで心配になってきた。