アリィ
デパートも、当然のごとく混んでいた。
こんな日に、わざわざこんな場所に来るなんて間違っていた。
ちょっと欲を出して贅沢しようなんて思うからいけないんだ。
とはいえ、父への報復のつもりがその前に罰が当たった、なんて絶対に認めたくなくて、
ここまで来たからにはとびきりの夕飯を買って帰らねば気が済まない。
ネガティブのうえに諦めが悪い、だから私は疲れるのだと分かってはいるけれども……。
デパ地下の低い天井の下、私は食料のために戦った。
押しのけられ、足を踏まれ、それでも大勢の人をかき分けながら進み、健康指向の惣菜売り場で
「十種の雑穀とひじきのサラダ」と「海の恵みのパスタ」なんてオシャレなものを買ってやった。
満たされた気持ちで帰ろうとしたが、いくら田舎のデパートといえどもそれなりの広さがある。
私は道を間違えて宝飾品売り場に出てしまった。
明るすぎる照明に照らされ、ガラスケースに誇らしげに横たわる金、銀、プラチナ、パールにダイヤモンド……
薄汚い中学生にはまぶしくて、目も開けていられない。
ああ今日は逃げてばかり、でも逃げるしかないんだ……悪いことなんてひとつもしていないのに。
強いて言うなら、この極度な自虐思考が罪なのかもしれない。
……なんて、相当病んでいる。
私は胸の奥でひそりと自嘲しつつ、エスカレーター横の店内地図で場所を確認し、早足で出口へ向かった。