アリィ

期待してはいけない


しんどい、しんどい、しんどい。


重たい体を引きずって、やっとこさ教室までたどり着いた瞬間、みごとなタイミングで予鈴が鳴った。


いつもにも増してギリギリの登校だ。


「ゆっぴー、遅いよー!今日は休みなのかと思った!」


椅子の上で駄々をこねるようにぴょこぴょこと体を揺するアリィに、そこはかとない殺意を覚える。


よろよろと席に着けば、不安になって念のためにつけてきた夜用のかさばる綿が不快で、泣きたくなった。


お腹は痛いし、腰は痛いし、たぶん出血は少ないのだろうけれど、いきなりどくどく出てきたらと思うと恐くて仕方ない。


この年だから、きっとこのクラスにいる女子の半分以上はもうすでに初潮を迎えているはずである。


それなのに、今まで特に顔色の悪い者を見かけなかったとはどういうことか。


毎月こんな状態になっているはずなのに、どうしてみんな平気でいられるんだ。


個人差はあると聞くけれど、それにしてもこんなにひどいなんて。


ちょっとブルーだわ、なんて気取りながら憂いの表情を浮かべていられるレベルじゃない。


やるせない。


こんな、どうしようもない怒りやいら立ちが。




「ちょっとお、ゆっぴーってば今日マジ暗いんだけど。

アリィつまんないじゃん、元気出してよ」




空気の読めないこいつに向かうのは必然で。


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