アリィ
「じゃあ決まり!八月二十九日から三十一日までお泊り会だ!
一緒に宿題したり、おしゃべりしたりしようね」
ウソ。
こんなのウソだ。
せっかく一人きりで過ごせる夏休み、一日たりとて何者にも邪魔されたくなかった。
それなのに、最後の三日間を、よりにもよってアリィと過ごさなければならないなんて。
教室のクーラーは壊れたままなのに、全身の汗が一気に引いていく。
「楽しみだねえ!」
なにが、一体どのように楽しみなのか。
どうしてアリィは私なんかと一緒にいたがるのか。
こんなにも素っ気なくふるまっているというのに、なぜ気づいてくれない。
不思議を通りこして不気味だ。
呆然としていると、チャイムが鳴った。
麻生先生は教室へ入ってくるなり、開口一番。
「ごめんね、まだクーラーの修理のめど、立たないの」
胃からすっぱいものがこみあげてくるのを感じた。