アリィ


女が世の中からワレモノ扱いされるのは違うと思う。


でも今の言葉はあんまりだ。


知ろうとしても知り得ない、分かち合えないことならば、せめて思いやるべきではないのか。


なぜ、こんな理不尽な言われ方をしなければならないのか。


私が子供だからいけないのか。


煮えくりかえったはらわたから立ちのぼる蒸気を逃がそうと、口がぱくぱく動いたが音にならない。


ただ、ただ、悲しくてたまらない。


言いたいことはたくさんあるけれど、感情が言葉に入りきらなかった。




エンジンがかかる。


細かい振動に揺られて、臨界点だった気持ちが頬を伝った。




「……恐かったんだよ」




一番言いたくなかった本音が、弱々しくこの口から漏れた。


車が走り出す。


父は何も言わなかった。

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