アリィ
突然、部屋の扉が開いた。
私は、心臓の鼓動さえ止めてしまうほど、ますますじっと動かなかった。
耳を澄ますと、かさり、と乾いた音がして扉は閉められた。
忘れていたまばたきを三回して、私は毛布をかぶったままベッドから降りた。
闇に慣れた目は、暗い部屋の中を充分に認識できる。
毛布を引きずりながら四つんばいで進んでいくと、扉の前には薬局でもらった薬があった。
もしかしたら、それは父なりの優しさだったのかもしれない。
さっきは言い過ぎたと、謝罪の意味もこめて、父は私にそっと薬を渡してくれたのかもしれない。
でも、今の私には、この薬が投げ捨てられているようにしか見えなかった。
わずらわしいものを全て閉め出したいという意図が、この薬からは伝わってくる。
父は私を拒絶したのだ。
そうとしか思えなかった。
この日から、私は父と口をきかなくなった。