ビー玉の瞳
手術が終わってから、ううん、目がとれてからずっと気付いていたことがあった。
――後ろが見える。
後ろだけじゃない。右も左も上も下も、ボクは真正面を向いたまま見ることができるんだ。
それは手の中にあるボクの目のおかげだった。
脳と繋がっていなくても見える。寝ているときでさえ見える。
ボクは取れた目をすぐに気に入った。
ボクがママにビー玉の目のことを言わなかったのは、きっとママが目を取り上げて、もう一度手術すると言い出しそうだったから。
ボクの視界は360度になった。