愛してあげる!
“お化け屋敷”
「外装はただの教室なのにね」
「それが尚更怖いの!!」
隣に立つ夏乃が、嫌に冷静に呟いた。
拓巳(と海斗君)のクラスが文化祭でやるのはお化け屋敷。
そんなことも知らなかったあたしは、拓巳に「俺の教室来いよ」と連れてこられて、
何の変哲もない教室のドアの前で一言、運命の言葉を言われたのだ。
───『お前今から実験台な』
・・・話によると、“どんな仕掛けが一番客を驚かせられるか”について議論になったらしい。
そのあと何故か“誰かに体験してもらえばいい”という結論に至り、
そして最低最悪なことにその“誰か”に“葉月妃那”が見事抜擢されたというわけだ。
(あたしはこんなことをするために男の子たちと仲良くなったんじゃなぁぁぁぁぁい!!)
「自業自得」
「うるさい、夏乃!」
拓巳に捕まったって危険だ。
そう判断したあたしが夏乃にしがみつくと小声で図星を言われ、小声で言い返す。
「俺の夏乃にくっつくな!」ってうるさいよ、海斗君!!
(ちなみに思い切り露になった海斗君のシスコンぶりに、知らなかった人たちはかなり引いていた)
覚悟を決められないまま早20分・・・実はあたし、ホラー物が大嫌いなのだ。
お化けとか幽霊とかホント無理。
拓巳も夏乃も海斗君もそんなこと分かりきってるはずなのに。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと手加減して怖がらせるから」
ドアがガラッと開いて和也君と萩君が顔を出す。
でもその顔は
「いやぁぁぁぁぁっ!!!」
和也君顔ないし!!萩君頭から血出てるし!!!
あたしが半泣き・・・っていうか9割泣きで夏乃の後ろに逃げ込むと、
二人がケラケラ笑う声が聞こえた。
すでに怖がらせ方に手加減ないじゃない!とあたしは両耳を塞いでしゃがみ込む。
「しょうがないなぁ」と夏乃がため息をついたのが分かった。