愛してあげる!


「・・・ん」

「やっぱりか」



おじさんが見えなくなった頃に、拓巳に手のひらを差し出す。

拓巳はと言えば、ため息をつきながら肩を落とし、

それでも文句一つ言わずに私の手のひらに500円玉を乗せた。

よしよし、よく分かってるじゃないか。



和也君とのデートの翌日。

珍しく拓巳があたしを迎えに来たと思ったら、和也君との“デート”の真相を探りに来たようで。

(どうやら、和也君がもうデレデレでデートの実況を教室で自慢していたらしい)

(ちなみに店員さんに「カップル割引」と呼ばれてそれも嬉しかったらしい)

まぁ、あたしの話を一通り聞いて、拓巳は心底安心したようだった。

・・・安心って言ったって、『あたしが和也君に何かされていないか』じゃなくて、『あたしが和也君に何かしていないか』の心配をしていたようだったけれど。



「そうは言ったって、お前もっと他に和也を調子に乗らせない言葉あっただろ?」



隣を歩く拓巳は呆れがちにあたしを横目で見下ろす。



「あったかな?」

「あっただろ。・・・って、もしかしてお前また無意識か」

「は?またって何よ」



この男は何言ってるんだ?

眉を寄せながら睨むと、拓巳はわざとらしくため息をついて首を振る。

もーっ、だからなんなのよ。

和也君を誘っただけなのに、あたし!



「すいませーん」



拗ねたあたしと、よく分からないけど黙った拓巳の空気を破ったのは明るいお姉さんの声だった。

後ろからの声だったけれど、向けられているのが自分達だと分かってあたしたちは振り返る。

茶色いショートカットに、釣り目気味の大きな瞳。

スーツ姿でマイクを持ち、その後ろには大きなカメラ・・・

・・・

・・・

・・・

・・・って、カメラ?

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