愛してあげる!
鈍感男子高校生の自覚

‐Side:Takumi‐



「ねぇ、ちょっと。顔貸しなよ」



目の前の女は、俺の胸倉を掴んで有無を言わせぬ顔でにーっこりと笑った。

そのドスの効いた声と笑顔の迫力に固まるのは、俺もコイツの兄貴もクラスメートも同じ。



「・・・分ぁったよ」



もちろん、抗う術なんて有りはしない。

俺は頭を大きく掻きながら、素直にその言葉を肯定した。

来るとは予想していた。妃那に、メールをした時点で。

けれどメールをしてからこんなすぐに来襲されることはさすがに予想外すぎて、上手く対応できなかったのだ。



「海斗も付き合ってよね」

「はいはい、カワイイ妹の頼みは聞くに決まってるよ」



目の前の女───基、夏乃は投げ捨てるように俺のYシャツを話すと、彼女の兄にまでもキツイ口調で言葉を投げかける。

そんなピリピリした空気なのにも関わらず、海斗はといえば「分かってた」とでも言わんばかりに肩を竦めて、余裕たっぷりに笑ってさえいた。

その言葉を聞き終わるよりも早く、夏乃は身が竦むようなきつい目つきで俺を睨みつける。



「何言われるか、分かってんでしょ?」

「・・・」

「覚悟しなさいよ、言い逃れなんて許さない」



そりゃお前ら相手に言い逃れ出来るとは思ってないさ。

覚悟を決めながら「分かってる」と頷いて答えると、思い切り不審な目を向けられた。



「言い訳、一瞬でも考えたら殺すから」



・・・無心で歩こう。そう、心に決める。

(夏乃の読心術は間違いなく本物だ)



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