愛してあげる!
あたしは、あたしにとって当たり前のことを言っただけ。
だから、ちょっと拗ねたように口を尖らせた拓巳の答えにびっくりした。
じーっと彼を見るも、拓巳はあたしを見てくれない。
ついでに答えてもくれない。
「ちょっと、拓巳―」
急に無言になってしまった幼馴染に困ってしまう。
あたしは「うー」と無意味に唸りながら、黙々と歩く彼を見上げた。
すると、ふ、と拓巳の視線が固まる。
え?と思って追いかけたら・・・そこにあったのは、昨日和也君と来たケーキ屋さん。
ケーキ屋さんと、拓巳を何度か見比べる。
そして、その横顔を見ていて、
あたしは一つの結論にたどり着いたのだった。
「拓巳、ケーキ屋さん行こっか」
「は?」
「ちょっと2駅遠いんだけど、そこもカップル割引やってんだってー!」
驚いてる拓巳の顔を覗き込んで、あたしは笑う。
「拓巳も本当はケーキ食べたかったんでしょ?」
だから、昨日和也君と行っちゃったことを拗ねてるんだ。
それで“カップル割引”なんてものを使ってるから、
誰かとカップルに誤解されることは今更だ、なんて言ったんだろう。
「あたりでしょ?」
ふふん、伊達に幼馴染やってないわよ!
得意げに腕を組んで拓巳を見た。
(見たか、シャーロック・ホームズ張りの推理力!)
拓巳はといえば、呆気に取られたようにあたしを見つめていて。
数秒間固まったかと思えば、それからはぁぁと大きくため息をついた。