愛してあげる!


「え、何何?修羅場?」

「妃那ちゃんが瑞樹先輩取ろうとしたらしいよ」

「うっそ、信じられないー」

「確かに可愛いけどさぁ、常識はずれだよね」

「超軽蔑するんですけどー」

「調子乗りすぎでしょ」

「っていうかー、妃那ちゃんしつこいらしいぜ」

「マジ自意識過剰」

「そんな女だと思ってなかった」

「迷惑過ぎじゃない?」



聞こえてくる声があたしの心に突き刺さる。



───あたし、何処で間違えたっけ。

───・・・何か、悪いことしたっけ。



ただ、瑞樹先輩が好きだった。

まっすぐ瑞樹先輩だけを想ってた。

自慢じゃないけど男の子に声掛けられることは多い。

それでも目移りなんてしたことなかった。



男なんて、ずっとあたしを褒めるための存在だった。

あたしに尽くしてくれることも、あたしを褒めてくれるのも当然のことで、

あたしに嵌らせるのも簡単で、

そんな男の子たちをからかうことが楽しくて、

そんな毎日が当たり前だった。



───でも瑞樹先輩だけは違ったんだ。だから、好きになった。



彼女がいることなんて、ずっとずっと知らなかった。

だって、誰も教えてくれなかったじゃない。

だから、先輩が振り向いてくれる希望を信じてた。

実際は上手く応えることが出来なかったけど。

でも、そのためにいっぱい努力してきた。

睡眠時間も、お風呂も、運動も、パックも、いっぱいいっぱい努力した。

傷つくことだってないわけじゃなかった。

すべてが手に入るわけじゃなかった。

それでも、先輩が、ずっと、ずっと、好きで。

その背中を追いかけていた、だけだった。



それは、しつこくて、迷惑で、常識はずれで、調子乗っていた行動だったのだろうか。



あたしは、すべて間違っていたの?



「妃那、最低」



あたし、は ───


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