愛してあげる!
「確かに妃那は口は悪ぃし、計算高いし、生意気で高飛車で、
わがままだし、自己中だし、可愛げのかの字もねぇし!
俺もイラついたりうんざりしたりすることは数え切れないことあるけど!
でも!!」
「・・・」
「誰よりも努力家で、繊細で、寂しがりやで、真っ直ぐで、怖がりで、人の気持ちに敏感で・・・
そんな妃那のことお前なんかに分かってたまるか!」
強く言い切った拓巳の言葉の一つ一つがあたしの冷え切った心に入り込んでくる。
ポタリ、とたった一滴だけ雫があたしの右目から零れ落ちた。
「こいつの価値分かるのは俺だけだ」
「・・・」
「何も分かってねぇやつにこいつを渡す気はねぇし、
それ以前にこいつにとやかく言わせもしねぇ」
拓巳がこんなに力強い声を出すのを初めて聞いた。
ねぇ、拓巳。
あたし、瑞樹先輩ばかり見てたから気付かなかったよ。
貴方はいつそんなに“男の人”になっていたの?
「妃那は俺のものだ」
───貴方は、いつからあたしをそう想ってくれていたの?
拓巳。
拓巳。
拓巳。
あたしの思い出に、記憶に、貴方が居ないことなんてない。
けれど、
その中で“貴方”に気付いても居なかった、愚かなあたし。
呼吸が出来なくなったかと思うくらい、胸の奥からこみ上げてくる気持ちに苦しくなった。