愛してあげる!
たまには男前男子高校生の見せ場

‐Side:Takumi‐



夏乃と海斗の話と、俺が見た妃那の様子。そしてその他もろもろ。

それを合わせて、俺の中では確信に近い可能性が浮かんでいた。



───瑞樹先輩と妃那は、付き合っていないのではないか



海斗からの情報、すなわち“瑞樹先輩には彼女がいるかもしれない”という話。

それは実はうすうす俺も感づいていた。

瑞樹先輩を必ず見に来ている女の存在を知っていたし、

瑞樹先輩がたまに可愛らしく包装された袋を持っていたこともあったし、

何より妃那のことを話したときの洋平先輩のあわてた態度。

それを合わせれば、そんな疑惑を抱くのは簡単だ。

ただ。

瑞樹先輩は俺の尊敬する先輩だったから嘘をつくとは思ってなかったし、

妃那が信じていたから俺が言及することではないと思っていた。



けれど。

その海斗の疑惑から、夏乃が学校内で調べたらしいのだ。

その“彼女”らしい人物について。

周りの話からリサーチしたところ、十中八九2人の付き合いは間違いないということだ。

・・・瑞樹先輩に、裏切られた気持ちだった。



───『じゃぁ瑞樹先輩は二股してるってこと?』

───『許せないわ、そんな浮ついた気持ちで妃那に手出すなんて・・・!!』



強張った海斗の顔と、怒りに満ちた夏乃の顔はすぐにでも思い浮かぶほどだ。

ただ、俺は引っかかることがあってただただ無言を決め込んだ。

思い出すのは、妃那の泣き顔・・・妃那は必死に何かを隠しているようだった。

あの泣いたときの話題も、“瑞樹先輩”がらみだった。

もしも二股されてるということを知らずに瑞樹先輩と付き合っているのなら泣いたりしないはず、

そして二股されているということに気付いているならば、プライド高い妃那はたとえ瑞樹先輩だろうがこっぴどく振っていたはずだ。

ともなれば、残る可能性はたった一つ。



───『瑞樹先輩と妃那って、ホントに付き合ってんのか?』

───『『は?』』



俺の呟きに、2人は目を見開いた。

俺は顎に当てていた手を離し、顔を上げて海斗と夏乃の顔を見つめる。


< 173 / 200 >

この作品をシェア

pagetop