愛してあげる!
その雫を見た拓巳の表情が、ほんの少しだけ変わる。
拓巳。
貴方のそんな苦しそうな顔も、初めて見たよ。
「───なんて。・・・ごめんな」
ふ、と頬から拓巳の手が離れた。
「今の妃那が傷ついてるって分かってんのにそこに付け込もうとしてる───
それに、俺が勝手に誤解して突き放したのに、勝手な話、だ・・・っ!!」
拓巳の声を聞き終わる前に、あたしは自分から拓巳に抱きついた。
拓巳の声が止まる。
驚いたのかも知れない。
けれど、そんなことを考えるよりも、あたしはただただ拓巳の首に両腕を回してぎゅっと抱きついた。
「・・・別にそんなのどうでもいい」
ゆっくりと紡ぎ出したあたしの本音。
あたしの行動に拓巳はバタバタ手を動かして慌てていたけれど、
あたしが話し出すとピタリと止まった。
「あたしね・・・あたし」
ちゃんと言わなきゃいけない。
拓巳が言ってくれたみたいに、あたしもあたしの気持ちを。
「気付いてると思うけどね、あたし、瑞樹先輩と付き合ってなかったの・・・」
「・・・」
「応援してくれたみんなに申し訳なくて、嘘ついちゃったんだけど、
拓巳なら嘘も気付いてくれるんじゃないかって甘えてた」
あたし達のすれ違いはそこから始まった。
そう、あたしがいけなかったんだ。
「断った理由はね、自分でも上手く分からなかったんだけど───ただ」
声が、震えた。
「いつだって思い出すのは、拓巳だったんだ」