愛してあげる!


「拓巳、このにおい好き?」



妃那は不意にそう尋ねてきた。

俺はもの珍しい小瓶をいじりながら「んー」と呟いて、



「お前はこういうさっぱりしたのよりいつもの甘い方が似合う」



と答えた。

妃那の好み、

妃那に似合うもの、

妃那の欲しい言葉、

俺は全部分かってるつもりだ。

予想通り妃那は満足したように笑って、「それ、いらない」と答えた。

もったいね。

なんて言いながら、俺も笑う。



「魔性の女だな」

「褒め言葉として受け取っておくね」



こんなやり取りだって、いつものことだ。



「で、どんな質問だったんだ?」



俺が小瓶から顔を上げると、彼女は綺麗な二重の目を上に向けて「えーっとね」と小首を傾げた。

少しばかり間を置いて、ピンときたように答える。



「恋愛のアンケートだった!」



その答えは予想外すぎて、思わず「は?」と目と口を大きく開いた。

すると、逆に妃那もびっくりしたようで、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。

俺は、つい大きく唸りながら考える。

恋愛・・・妃那に、恋愛。

考えること数秒。

やっとのこと妃那に投げかけた言葉は、



「お前、恋愛したことあったっけ?」



だった。

妃那はきょとんと目を瞬かせ、それから自信満々にきっぱりと答えた。



「ない!」

「だよな」


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