愛してあげる!
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「エントリーナンバー6番、葉月妃那さん!なんと例外の1年生からのエントリーです!」
マイク越しに響いた声を確認して、あたしは階段を上がる。
大きなステージには強くスポットライトが当てられて、
そして下を見れば多くの観客───一部は間違い無くさっきのあたしの事件を見て冷やかしに来たんだろう。
そんな表情をした人たちに、嫌味なまでににっこりと笑ってみせる。
『気にしてないわよ?』
そう告げるために。
だってあたしは可愛いもん。
男が何?修羅場が何?ここに立つのは当たり前!
(・・・まぁそう思うまで復活したのは、間違いなく拓巳のおかげなんだけど)
「さぁ葉月さん!自己紹介と一言、そして特技をどうぞ!」
わざとらしいまでに元気に告げられる司会者からの一言。
あたしは「はい」と答えてから、一歩歩いてマイクの前に立った。
ゆっくり辺りを見渡すと、すぐに拓巳を見つけた。
その隣に、夏乃もいる。海斗くんもいる。
「エントリーナンバー6番、葉月妃那です。
今回、欠席者が出たとのことで、急遽ここに立たせていただくことになりました」
ゆっくり話し出すと、マイク越しの少しくぐもった声が響いた。
心配そうな顔の拓巳。
その心配は、好奇の視線にさらされてるあたしの心配?
それとも、あたしが何かをするんじゃないかっていう心配?
あいにくね
「一部の方はご存知かと思いますが、さきほどちょっとしたいざこざがありました。
ですがあたしに何も恥じるべきところはありませんので、
無論ここに立つことを辞退したりはいたしません」
後者なんだなっ!
笑顔で言い切ったあたしの言葉に、呆気に取られる顔が見られる。
拓巳と夏乃と海斗くんは頭を押さえたり、ため息付いたり、笑ったり。
もっと驚かせてあげようか?
わずかに芽生えた悪戯心。
あたしはすぐにそれを実行した。
「むしろ、あたしはここに立つべき人間だから」