愛してあげる!
その瞬間吹いた一陣の風が、押さえる手を無くしたスカートを捲りあげた。
少女は慌ててスカートを押さえ、
それからこちらを見て恥ずかしそうに少し怒ったように迫力なく睨む。
小さく口が動いた。
“見た?”とでも言っているのだろう。
(それを見て、うおおーっと叫ぶ男達・・・)
その後「白!」「ピンク!」と好き勝手叫び出す。
その光景に、また俺ははぁと大きくため息をついた。
そう、これが俺の悩みの原因だ。
このさっきから飢えた男共を興奮させている女、葉月 妃那(はづき ひな)。
幼稚園から一緒に過ごし、家も隣、その上窓越しに行き来できるほどお互いの部屋が近い、いわゆる幼馴染。
小さい頃はまぁよくある結婚の約束なんかも交わしたりした仲だ。
そして誰もが認める絶世の美少女。
この女に、俺は呆れと嫌気と恐怖と、そしてある種の尊敬を抱いている。
「ずりーぞ、拓巳(たくみ)!あんな可愛い幼馴染がいて!」
「───そうか?」
「この贅沢者!!代われるなら代わりてぇっつーの!!」
代わりたい、ねぇ。
首を捕まれぶんぶん揺らされながら、ひどく冷静に思う。
代われるもんなら代わりてぇわ、俺も。
とりあえず、朝アイツが「教えてあげる」と言っていたことでも教えておくか。
「言っておくが、お前ら」
「?」
「今日は黒だ」
俺は三途の川を見た。