愛してあげる!


「あたしさ、可愛いでしょ?」

「自分で言うか。・・・可愛いけど」

「でも、これを維持するための努力はしてるんだよ」



あまりにも真剣に妃那が俺の目を見て告げるから、俺は「知ってる」と答えた。



「筋トレだってやるし、パックだってやるし、睡眠時間だって取るし、ご飯のメニューだってちゃんと考えてるし。

でも、勉強や家事をやってないわけじゃない」

「うん」

「でも、それって何のためなのかな?

拓巳を初めとして、男の子たちがあたふたしてるのを見るのが好き。

男の子があたしにはまっていく姿を見るのも好き。

友達に「妃那は可愛いね」「優しいね」って褒めてもらうのも好き。

街頭でインタビューやアンケートに答えたり、モデルをするのも好き。

でもね、“そのために可愛さ維持してるの?”って聞かれたら、

きっと答えはNOなんだ」



珍しい話題に、珍しく真剣な妃那。

そして彼女の意外な悩みに、俺は少し驚いて。

でも、出来る限り優しく笑った。



「俺のためじゃん?」

「馬鹿ですか?」

「うん。冗談」



あたし真剣に相談してるのに!

と妃那はむーっと口を尖らせる。

俺は「拗ねるなよ」とぽんぽんと子供をなだめるように彼女の頭をたたいた。



「恋愛するため。・・・そう言って欲しいのか?」

「・・・分からない。あたしは拓巳の言葉が欲しいの」


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