愛してあげる!
ちょっと叩き起こしてランニングに付き合わせただけよ。
そう答えると、「やっぱりしてんじゃない」と夏乃は大きくため息を付いた。
「ランニングくらい一人で行けばいいのに」
「嫌よ、朝からおじさん達の相手なんてしたくないわ」
一人で走ってると、声を掛けてくる人はやっぱり多い。
それも、朝のランニングっていうと結構年上の人が多くて。
何か奢ってくれるとか、何かくれるとか、メリットもないのに相手するなんて疲れるじゃない。
(それでも本当に声を掛けられたら、この性格上ついつい愛想よくしてしまう)
(だってもしそれが知り合いのお父さんとかだったら大問題だし!)
「“可愛い”って大変ね」
「ホント」
「否定しなさいよ」
夏乃は呆れたように言うけれど、だってあたし可愛いし。
そうあたしが思ってることも親友にはバレバレなのか、肩をすくめられた。
「いい度胸してるわよね、妃那」
「褒め言葉として受け取っておきまーす」
にっこり笑って、夏乃にそう答えた、瞬間だった。
「きゃっ!!」
ドンッと突然後ろから大きな衝撃が来てあたしはバランスを崩す。
「妃那!」と夏乃が慌てたのがわかったけど、そんなの間に合うはずもなく転ぶあたし。
受身を取る時間もなければ、反射神経もないあたしの膝は、
手をつく前に鈍い音を立てて地面とこんにちはするわけで・・・
「~~~ッ!!!」
「妃那、大丈夫!?」
慌ててあたしを起こしてくれた夏乃は、すぐに「ちょっと!」と声を荒げた。