愛してあげる!
がっくり、とうな垂れながら尋ねると彼は爽やかに笑う。
「俺はいつだって夏乃至上主義だよ」
「出た、シスコン」
「うるさいよ、拓巳だって似たようなもののくせに」
いや、お前とは大分違うと思うけどな。そんな言葉はぐっと堪える。
「俺、そんなに妃那に甘いか?」
「敵ってない、って言う方が正しいかも知れないけど。
なんだかんだ拓巳は妃那の言うとおりに動くだろう?」
喋りながら屈伸を始めた海斗を見、そういえば俺もまだだったと思いながら同じようにストレッチを始めた。
「今日だって、理不尽といえば理不尽じゃないか」と海斗は肩を竦めた。
うーん・・・確かに。
今日のランニングの間でも「のど渇いたなぁ」と妃那が言えば当たり前のようにお茶を買いに行ったし、
「靴擦れ起こした」と言えばポケットに入れてある絆創膏を渡したし。
(ちなみに絆創膏はもちろん妃那用に常備したものだ)
(もっと言えば妃那も絆創膏は持っているが、それは本人曰くあくまで“女の子らしさアピール”のためのようで、使うことはない)
だけど、それは
「なんか当たり前になっちまってるから、こう、至上主義だとかそういうイメージじゃねぇんだよな・・・」
幼稚園の頃から、当たり前のことだった。
何を考えることもなく、ごく自然に妃那の欲することをしてきた。
変だと思われるかも知れないが、それは“当たり前”で、“自然なこと”で、“日常”だったんだ。
だから、“嫌だ”というような感情は・・・ない。
まぁ、時々俺の行動が妃那の計算どおりになっていることもあるけれど。
「だからシスコンみたいなものだって言ってるんだよ」
可笑しそうに海斗は笑う。
コイツの言うことが分かるようで分からなくて、首をかしげながら「そうか?」と答えた。
「あ、ちなみに、最初の質問に戻るけど」
「最初の質問?」
「どっちの味方かっていう話」
「あぁ」