愛してあげる!
そういえば忘れていた。
これで海斗が夏乃の名前を出したところから話は反れたんだった。
「俺はいつでも、話が面白くなるほうの味方だね」
今回は、妃那の味方。
そう言う海斗の背中には黒い羽が見えた。
あぁ、俺の周りにはどうしてこういう困った性格のやつしか集まらないのだろう。
(そしてそのうち分かってもらえると思うが、さっきから名前だけ出てきている“夏乃”。
こいつも大概普通じゃない)
「たぶん、拓巳が面倒見良すぎるんだよ。生粋の苦労症だね」
「お前も読心術の使い手か」
「拓巳が顔に出すぎ」
クスクス、と海斗は手の甲で口元を押さえて笑う。
「くっそー、俺って何でそういう役回りなんだ?」
「でもそれが拓巳のいいところだって」
「お前にフォローされても嬉しかねぇよ」
頭をぐしゃぐしゃかき回しながらそう答えると、「へぇ」と海斗はにやりと笑った。
「誰にフォローされたら嬉しいわけ?・・・妃那?」
「なんでそこに妃那が出てくんだ」
「なんとなく?」
そう言って首を捻る海斗だが、その顔から皮肉めいた笑みが消えることはない。
どうせよからぬことを考えてるに決まってる。
「はぁ・・・お前さ、何度も言ってるけど、俺と妃那はただの幼馴染だからな?」
「はいはい、知ってるよ」
「本当に分かってんのかよ」
「分かってるってば。“あんなに根性も性格もひん曲がった女の本性知って好きになれるヤツいたら見てみたい”でしょ?」
「覚えてんなら言うんじゃねぇよ」
俺のいつものセリフを丸々反復して見せたこの男に、俺はやっぱり肩を落とすしかない。
つるむようになって何年も経つが、こいつの考えが読めないのもいつものことだ。