愛してあげる!


お気づきだと思うが、この性格が歪みきった女こそ葉月妃那。

学校で人のクラスメートを散々弄んだアイツである。



「で、拓巳?あたしの下着の色について、男の子達なんか言ってた?」



妃那は妖しく舌でペロリと唇を舐めると、ベッドに座る俺の隣に来て至近距離で顔を覗き込んできた。

俺の部屋、二人きり、美少女、ベッド、そして・・・下着の話題。

自然に艶々と輝く唇に目がいってしまうのは、今妃那が舐めたせいだ。

いくら妃那が幼なじみで女だと意識してないにしても、つい目がいってしまう。

俺だって健全な男だってこと、この女は分かっているんだろうか。

(分かってるんだろうな・・・ついでに俺がなんだかんだ手を出せない男だってことも)

(そしてきっとこんな俺の視線も計算してるんじゃないだろうか、この女)

ふわり、と香る甘い匂いにクラクラしながら「言えるかよ」と顔を逸らした。



「だぁめ、許してあげたでしょ?代わりに答えてよ」



ね?拓巳。

そう甘い声を耳元で囁かれちゃ堪らない。

妃那の綺麗な手が俺の手に重なる。

ちらり、と横目で妃那を見れば、彼女は強い目力で一瞬にして俺の視線を釘付けにした。

魔法に掛かったように俺の口が動く。



「・・・・・・清純そうに見えて黒とかマジ燃えるんですけど!」

「ははっ、やっぱり拓巳も男の子だねぇ?」

「バッ、俺の感想じゃねぇよ!」



俺が慌てて反論すると、妃那はさっきまでの様子に戻って天真爛漫に笑いながら「分かってるよ」と答えた。

やっぱり俺からかってるだけかよ・・・マジになって、俺だせぇ。(そして顔が熱い)

妃那は体を離すと、「真っ赤だ」なんてクスクス笑って俺の頬を摘んだ。



「うるせぇ」

「ううん。なかなか純情でよろしくてよ?」

「お前は計算高くて怖ぇよ」

「うわ、ひっど!」



ひどいのはどっちだっつーの、このドS女。

・・・と思うのは心の中でだけ。

綺麗にグロスの塗られた唇を綺麗な三日月にして微笑む、

可愛らしい幼馴染に俺はなんだかんだ勝てない。

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