愛してあげる!


俺の悩み、その一つはこの性格も根性もひん曲がった幼馴染が計算で、計算で、計算で!!男を落としていくことだ。

(大事なことなので三回言いました)

騙されていく友人達に、俺は同情せざるを得ない。

一番の被害者である俺が言うんだ、間違いないだろう。

妃那は物心ついたときには既に自分が可愛いということを自覚し、

そしてモテる人間だということに気付いていた。

小学校高学年に上がる頃にはもう男の性格やタイプを把握する観察力を持ち、

中学校に上がる頃には、自分がどう振舞えばそのターゲットを落とせるかのノウハウさえも理解していた。



───我が幼馴染ながら恐ろしい。



かくして俺が止める間もなく、

妃那は性格と根性を修正不能なところまで捻じ曲げて行き、

世間的に可愛く言えば“小悪魔”、悪く言えば“計算高い”女になり上がった。

そして今はこいつと俺は敷地的に隣合わせにある女子校と男子校に通っている。

こんな男を落とすことを生きがいにするような女がどうして女子校に通ったかと言えば。



「で?今日のあたしへのラブレターは何枚?」

「・・・ほらよ」

「えー、3枚かぁ。今日は少ないなぁ」



俺を利用して男子校の男共を、一網打尽にするためだったらしいのだ。

思えば受験の時「拓巳の志望校ってイケメン揃いだよね」と笑顔で言っていた気がする・・・が、まぁ今となっては仕方がないだろう。



高校に上がって5ヶ月。

妃那は少ないなんて言っているが、少なくとも俺の学年はほぼすべて落としているだろう。

(一日平均4枚×週5日×月4週×夏休み抜いて4ヶ月・・・計算するのも恐ろしい)

不満そうに口を尖らせる性悪女に俺はため息をついた。


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