愛してあげる!
「お前さぁ、この手紙のやつら一応はお前にそれなりに惚れてんだぜ?」
「分かってるよぉ。だから、あたし誰とも付き合ったことないでしょ?」
にこっと妃那は微笑んで首を傾げた。
その言葉の内容と、可愛い笑顔(それは認めざるを得ない)に俺はう、と詰まる。
確かに妃那は「好きでもない人とは付き合えない」とふざけた付き合いはしていない。
かといって果たして納得していいのか・・・それは悩みどころだ。
(この女は計算出来るだけあってまぁ頭の回転は早く、口では敵わない)
「そうだとしても、俺がどれだけ迷惑かお前考えたこと『♪~』
俺を遮って流れる着メロ・・・この音楽は妃那の携帯だ。
妃那は「お」なんて目を輝かせながらポケットから携帯を出す。
・・・まったく、携帯までコイツの味方かよ。
俺に「妃那を責めるな!」と言わんばかりのタイミングに、頭を抱える。
白い携帯に、シンプルに一つだけついたピンクのリボンのストラップ。
(それは俺から妃那への誕生日プレゼントだったりするんだけど)
(妃那のこういう小さい行動につい可愛いなぁと思う俺って・・・)
それを慣れた様子で親指一つで操作する妃那は、こうしてるとごく普通の女子高生なんだけどな。
誰も、小悪魔女だなんて思わねぇだろ。
「何?人の顔そんなにじーっと見て」
「え?あー・・・いや、お前がそのストラップつけてるからさ」
「男は男でも、拓巳からのは特別だからね」
突然妃那が俺を見たから弁解すると、彼女はへへっと照れたように笑った。
こういうふとした動作に計算はない。
本性を知っている俺ですら、この表情には勝てない。
・・・コイツ、計算しなくてもモテるとは思うんだけど、まぁ本人が計算して男があたふたするのを見るのが楽しいというんだから、とやかく言わなくていいだろう。
そんな会話をしてる間に、また妃那の携帯が鳴る。