愛してあげる!
コイツの不思議なところは、こんなお世辞にもいいとはいえない性格をしているのにも関わらず女からも好かれているということだ。
この捻じ曲がった部分を見せているにしろ見せていないにしろ、
1年なのに男にモテる、顔がいい、ついでに頭も良ければ運動神経もいい、
というのはそれなりに目をつけられるだろう。
けれど妃那は同級生どころか先輩からも可愛がられるタイプなのだ。
もちろん、こいつのことだから嫌われるようなことはしていない。
女の前でも可愛く・優しく・明るくということを徹底してヘマしないようにしているのだろう。
───それでも。
「あ、そうだ!」
妃那ははたと何かを思い出したように、突然自分の鞄を漁り出した。
それから、「はい!」と差し出された手には、透明の袋に入ったマフィンが一つ。
ピンク色のリボンで結われている。
そのマフィンのこげ色、カップ部分とのバランス、そしてラッピング。
売り物と間違えそうになるが、
「これ・・・」
「今日ね、調理実習で作ったんだよ!」
ふふ、と笑う妃那に俺は納得し、そして「やっぱり」と思う。
妃那はお菓子に関して、パティシエになれるんじゃないかと感嘆するほどの腕を持っている。
「ちゃんと拓巳のために、砂糖控えめにしたんだぁ」
そう言ってにこにこされると、今日の学校での苦労やこいつの困った性格なんて吹き飛びそうになってしまう俺。