愛してあげる!
聞きなれない音を反復すると、「ダメージケアよ!」と妃那はふんぞり返った。
(ちなみに後で聞いたら、しっとりは料理に肌質、髪の毛と意外と登場する言葉らしい)
「女ってめんどくせぇな。色々」
「そう?案外楽しいけど」
「俺には無理」
「拓巳は飽きっぽいもんね」
妃那は俺を見てクスクスと笑った。
分かってる。
分かっちゃいるけど、なんとなく悔しいのは・・・なんでだ?
「で、拓巳普段のと今のどっちがいい?」
俺をからかうのにも飽きたのか、妃那はそう言って話を戻した。
摘んだ妃那の前髪を指の間に通しながら、「んー」と考える。
「俺はサラサラの方が好きだけど?」
「そう?」
「おう、そっちのが触りやすい」
そう言えば、妃那は「そっかー」とちょっと拗ねながら自分の髪を触った。
───どうやら、こっちの方が気に入っていたらしい。
普段は我が道を行く妃那だが、こういう男視点の話になると割と俺の話も聞くようになる。
素直な妃那もまぁ少なからずかわいいとは思うが、違和感があるのも本当だ。
振り回されるほうに慣れている自分に情けなく思いつつ、
とりあえず「妃那の好きな方がいいんじゃね?」と付け足しておく。
「別に、普段の“ほうが”ってだけでこれも嫌いじゃねぇし」
「そうー?」
「おう。満足行く方にしとけよ」
俺のその言葉で、妃那の不安そうな顔がやっと晴れる。
まったく、瑞樹先輩を好きになってから毎日この調子だ。
葛藤と不安の繰り返し───って、まぁ妃那の初恋だから仕方ないのかもしれねぇけど。
保護者(代理)としてはきちんと見守ってやるのも責任な気するし。
前髪から手を離して、その頭をポンポンと叩くように撫でた。
「頑張るのはいいけど、無理しすぎるんじゃねぇぞ」
「はーい!」