愛してあげる!


たぶん、捻じ曲がった性格の奥にある、コイツのこういう純粋な部分につい惹かれてしまうんだろう。

俺も、俺のクラスメートも、そして妃那の女友達も。

嫌いになりきれない、妃那の魅力。

計算は得意なくせに、そんな自分の力を知らない彼女は鈍感だ。

だからこそ余計可愛く見えて、そしてこうして騙されていくのは分かっているんだけど。

それでも俺も男。

こいつは兄妹のような幼馴染。



「・・・サンキュ」

「どういたしまして!」



騙されちゃいけない。

こいつは小悪魔以上に悪魔であり魔女であり魔王だ。

そう思っていたって、この笑顔に甘く、ついつい許してしまう俺は、結局シスコンみたいなもんだ。

今日こそはガツンと言ってやろう!・・・そんな俺の気持ちを先読みしたかのように準備されたそれに、つい黙ってしまうのだった。



俺には大きな悩みがある。

1つは、俺の幼馴染が計算で人のクラスメートを落とすこと。

1つは、クラスメートが俺の幼馴染に騙されて俺を殺そうとすること。

そして1つは、結局俺がこの幼馴染に強くなれないこと。





そんな情けない俺は、

ある意味幸せな俺は、

同じようなラッピングを施された大量のマフィンが妃那の鞄にあることなど知るはずもないのだった。





(「ねぇ、拓巳。おいしい?ねぇ、おいしい?」)
(「旨いに決まってんだろ」)
(「だよねーっ!」)
(「少しは謙遜しろ、この自意識過剰女!」)
(「うわ、可愛い幼馴染に向かってサイテー」)
(「・・・って辛っ!!何これめっちゃ辛っ!!」)
(「あ、ワサビ入れたの忘れてた」)
(「顔がいいからって何でも許されると思うなよ!」)

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