愛してあげる!


───・・・まぁ、でも、拓巳が起こしてくれなきゃあたしは遅刻してた。

学校にじゃなくて、拓巳のサッカー部の朝練に。

あれから、あたしは朝早くに拓巳と学校に行って、

運のいい日は校門で瑞樹先輩に会って、

そしてあたしの学校の屋上にあるタンクの上から朝練(=瑞樹先輩)を見るのが日課になった。



瑞樹先輩を一目見る。

それをしなきゃあたしは一日が始まらない。

一日が頑張れない。

お昼には会えるけど、1日1回でエネルギーが足りるわけがないもの!



だから・・・



「まぁ、おかげで瑞樹先輩に会えるんだし。一応・・・ありがと?」

「一応が余計。ついでに疑問文じゃなくて肯定文使え」



せっかく言っても、ありがたみが沸くはずもなく。

(あぁ、本当に拓巳って腹立つ!)

あたしはむっとして口を尖らせるが、そんなことに拓巳は気づきやしない。

訂正、気づいても気づかないフリをする。



「拓巳のバーカ!」



悔しくて、あたしはそう叫ぶ。

もちろん唐突な言葉だろう、拓巳は「はぁ!?」と不愉快そうにあたしを睨んだ。

その、言い返そうと拓巳が口を開いた瞬間、

思い通りの展開にあたしはにやりと笑って一気に足に力を込める。

そしてそのまま「競争ーッ!!」と叫んで駆け出した。



「ずっりぃぞ!」



なんて非難の声は聞かないフリ。聞こえないフリ。

拓巳の真似よ、お返しよ!!

内心そう思ってにんまりしていると、あたしよりずっと回転数の早い足音がすぐに後ろで響きだした。



先手必勝!!

っていうか、サッカー部の男相手にこれくらいのハンデありでしょ。

ううん、甘いくらいだわ。


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