愛してあげる!
あたしがにっこり笑って先輩に言うと「よく言うよ」と低く囁く声。
笑顔のままあたしは声の主───拓巳の膝裏に鞄を押しつけた。
がくんとバランスを崩して拓巳が膝から崩れ落ちる。
膝から着いたらしく「って!!」と苦々しげな声が聞こえた。
「大丈夫ぅ?拓巳。い・き・な・り、転ぶなんてどうしたの?」
「てっめぇ・・・!!」
「そんなに地面好きだなんて知らなかったよぉ」
拓巳が思いきり舌打ちをし、力を込めてあたしを睨み付けた。
だけど幸せ絶頂なあたしがスルー以外の行動をとるはずもない。
にっこり微笑んで完全無視。
一方「どうしたんだ?大丈夫か?」と拓巳(なんか)に声をかける先輩。
(そんな優しいところも大好きです!!)
「妃那。顔がだらしない」
「っと」
冷静な夏乃の的確なツッコミのおかげで、あたしの表情はぴたっと元に戻る。
やばいやばい。デレデレな顔を瑞樹先輩に見せられない。
「それじゃ、この二人もらってくぞ」
「はい!不束者ですが、よろしくお願いします」
「ハハッ、なんか嫁にもらうみてぇだな」
瑞樹先輩の言葉に返事をすると、先輩は苦笑する。
───“お嫁”
思いも寄らない言葉に「え?」と固まってるあたしに瑞樹先輩は柔らかく微笑むと、「まず10周からだな」と二人を引き連れていった。
「えー」なんてブーイングを完全無視して。
あぁ、後ろ姿もカッコイイ・・・!!
じゃなくて!!
「夏乃夏乃聞いた!?瑞樹先輩の口から“お嫁”って言葉が!!」
あたしが興奮して叫べば、夏乃は「は?」と眉根を寄せ白い目で私を見た。