愛してあげる!
世話焼き男子高校生の違和感
‐Side:Takumi‐
「あー・・・妃那ちゃんマジかわいいよなぁー・・・俺、本気で落ちそうかも」
ぼんやり、と表現するのが一番当てはまるだろう表情をして頬杖付く萩が見つめる先を追いかけると、
日傘を差しながら観客席の一番前に座る妃那の姿が見えた。
(ベンチが階段な上観客が少ないからいいものを、一番前で日傘っつーのもどうなんだ?)
そんなことを思って見ていると、俺の視線に気付いたらしい夏乃が妃那の肩を叩く。
妃那は夏乃を見、それから俺に視線を向けた。
それから立ち上がって、バカでかい声で
「応援してるからね!!ぜーったい勝つんだぞぉっ!!!」
と叫びながら笑顔でガッツポーズなんてする。
お前何処の誰だ。
朝突然俺の部屋に窓から乗り込んできて、
ドスの聞いた声で「応援行ってやるから日焼け止め代出しなさい」って言ったヤツと本当に同一人物か?おい。
(ついでにその後、「勝ったらあたしの応援のおかげだからお礼にパックも買うのよ」と千円札片手に悪魔のような笑顔を見せた)
「あーくっそ!やっべぇ、なんだあれ!!超かわいいんですけど!!」
萩が興奮した様子でユニフォームに顔を埋める。
「そうかぁ?」と適当にはぐらかすと、萩どころか周り一帯に声をそろえて「そうだよ!!」と怒鳴られた。
(夏乃が大分呆れた顔をしていた・・・それは妃那に大してか俺の周りの反応に対してか)
「いいよなぁ、この贅沢者」
「あんな応援されたら負けられねーだろ」
「妃那ちゃんみたいな可愛い子そうそういると思ったら大間違いだぞ!!」
「お前ら顔が良ければそれでいいのかよ」
口々に俺に文句を言ったり俺をどついたりするチームメイトに対し、呆れたように口をきく。