短編集
右頬のさっき出来たばかりの戦場の傷跡。
洗面所の鏡で見る。
当然、赤くはなっているが、傷はない。
おそらく、腫れることもないだろう。
一応、紗耶も手加減してくれてるみたいだ。
「義隆ー、朝ごはん適当に食べといてー」
隣の部屋から母親の声。
どうやら、さっきの俺の叫び声で起きたらしい。
少しは母親らしくしろよな。
ちなみに、父親は単身赴任中。
妻の顔を見に、ちょくちょく家に戻ってくるけど。
とりあえず、昨日の残り物を食べ、冷凍食品もプラスし弁当に詰める。
制服に慌てて着替える。
「いって来ますっ」
大声で言い、勢い良く玄関から飛び出る。
5分ほど走れば学校だ。
俺がこの学校を選んだのは、家から近いというのが、一番の理由だった。
学力も合ってるし。
紗耶とも一緒だしな。
校門で一旦止まって、息を整え、教室に向かう。
「おはよっ」
「おー義隆か。今日は右頬に当たったんだなー?」
「いったそー」
友達2人が話しかけてくる。
「ん、戦場の傷跡だぜー」
「頬をぶたれたみたいに見えるけど?」
「彼女にフラれた惨めな人みたいだよ?」
それはいいすぎだ。
あれ?紗耶がいない?
「そういえば、今日はこの間のテストの結果が廊下に出てたよー」
「義隆は、高校に入っても同じだなー。紗耶ちゃんもだけど」
「ほー」
紗耶はきっとそこだな。
とりあえず、廊下に出て、貼りだしてある結果を見る。
紗耶がいた。
さりげなく、紗耶の隣に行く。
お、俺に気づいてない。