短編集
「お前、今の席って、
ボーズの隣だろ?
えくぼが縦に並んで
てかてかっと光って
るの知らなかったろ
?バーカ
紗耶」
と書いてあった。
なんだコレ。
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その日は、俺1人で帰っていた。
友達2人は委員会。
何委員会にも入っていない俺は、普通に帰宅ってわけだ。
一応、さっきの手紙は紗耶に聞いたんだが、答えてくれるわけもなく。
顔を赤真っ赤にして、本気の回し蹴り。
ついでに、さっき女の子をいやらしく見つめてたでしょ、と濡れ衣をきせられた。
何で、今日はこんなにご機嫌斜めなんだ?
いつもは、ココまで殴られたり蹴られたり物を投げられたりしないぞ?
回し蹴りもされないし。
……いまだに腰が痛い。
歩いて家まで帰ると、走っている時の3倍の時間がかかる。
15分ぐらいはかかるな。
ようやく、家の近くの公園まで来た。
何気なく、公園の中を覗くと、紗耶が大きな桜の木の根元に座り込んでいた。
制服が汚れるのを気にするそぶりも見せず、小さいシャベルで土を掘っている。
ん?
幼い頃の記憶が蘇ってきた。
まだ、俺と紗耶が仲良く遊んでいた頃。
小学6年生の冬。
紗耶が格闘技を習い始める前だ。
あの時、今、紗耶がいる場所に2人で座り込んでた。
『コレは暗号なんだよ』
『俺と紗耶だけの?』
『うん。誰にもわからない』
『この箱も?』
『うん』
『これはいつ開けるの?』
『高校生になった、ヨシタカの誕生日!!』
『5月30日かあ』
『絶対、覚えててね』