短編集

んん?

なんか嫌な予感がする。


“格闘技を習います”

“とりあえず、紗耶に預けとく 信頼できるし”


「……紗耶」

「何?」

「お前が、小6の終わりめから格闘技を習い始めたのって……」

「ヨシタカを守れるぐらい強くなるためだよ?」


満面の笑みで言われた。

そんな顔されたら、何も言えなくなっちゃうじゃないか。

誰だ、こんな文面考えたのは。


「ヨシタカが提案して、質問も考えてくれたんだよね。嬉しかったあ」


うん。

それは良かったよ、紗耶。

そうだよね、バカな俺が考えたんだよね。

何故だろう、涙が出てきた。

一通目はそれで全てだった。

箱の中にそれを戻し、おそるおそる、二通目をの封筒を手に取る。


「……それって、私が未来の自分宛に書いたヤツ」

「じゃあ、もう一回埋めとこうか」

「……」


紗耶が悲しい顔をしている。

……さっさと便箋を取り出さないと。

一行目は、


“高校生の私へ。ヨシタカがまんがを預けてくれた。大切だし、銀行の貸金庫に預けておこうかな。”


貸金庫。

すぐ隣にいる紗耶が、期待のこもった目で見てくるけど、どーしろというんだ。


“ヒロインの足技が強い。”


まあ、バトルモノだしな。

確か、カポエラだったような。


“ヨシタカは足技が強い人が好みなのかもしれない。”


その結論は間違いだ。

ふと思いつき、まさかと思いながら、紗耶にきく。
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