短編集
「紗耶、お前がカポエラに熱心なのって……」
「そこに書いてあるとおり」
あれ、なんだか紗耶の目が冷たい?
「ヨシタカ、私、まだ全国大会一回戦突破もできないの」
「全国大会!?」
いつの間に参加していたんだ。
「私、もっと強くなるから!!そしたら、ヨシタカに言いたいことがあるの!!」
できれば、今言ってほしいな。
というか、これ以上強くなられたら、俺の身が持たん。
「だから、ヨシタカ、それまでは……」
たったっと俺から離れる紗耶。
紗耶の背後から夕日が差していて逆光になっている。
眩しいな。
紗耶の顔がはっきり見えない。
紗耶は、本当に可愛い。
やっぱり俺、紗耶のことが――
「……紗耶、それまでは?」
「私に話しかけんじゃねえぞ!!!クソ野郎――っ!!!!」
紗耶お得意のカポエラが炸裂した。
でも
やっぱり、
俺
紗耶のことが好きなんだ。
END