短編集


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朝起きた瞬間、私は激しい頭痛に襲われた。

寝不足かな、と考えたと同時に、昨日の恐怖が蘇ってくる。

おもわず、自分の肩を抱く。

朝ごはんはさっさと食べ、急いで家を出る。

とにかく、不安だったのだ。

この家に、独りでいたくない、と。


「いってきまーす」


鍵をしめる。

家の前の道を一人で歩いていると、左隣の家のおばさんがさっそく噂話をしていた。

相手は私の家の右隣のおばさん。

ちょうど、左右の家の人たちだ。

話を聞かせてるのは、右隣に家のおばさんみたいだった。


「――でね、主人4時ごろに私をたたき起こして言ったんですよ」

「なんて?」

「夜中に、この道に人がいたーって」

「まあ‥‥。この辺、あんまり人と通ないのにねえ?」

「きっと幽霊よ。小さい女の子だって言ってたもの」


その会話を何気なく聞きながら、私は恥ずかしくなる。

昨日の出来事による、恐怖さえも忘れたぐらい恥ずかしくなった。

その女の子、きっと私だ。

だって、昨日の夜中に外に出たし。

右隣に家からは見える位置にいたもの。

ちょうど、2時半ごろに――。

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