短編集

信じてくれるか分からないし、嫌な思いをさせたくない。

どうしようか‥‥?

私が悩んだ末に出した答えは、2人にすべた話してしまおう、ということだった。

話してしまえば、楽になるってよく言うし‥‥。


「‥‥美沙紀が心霊体験をしたってことかあ‥‥」

「‥‥それって、本当に幽霊だったのかな‥‥?」


香織が半信半疑で悩んでいる。

てっきり、凛は否定しまくるかものと思っていたけど、真剣に悩んでくれてる。

私は2人がはっきり否定してくれなかったことが、何よりもうれしかった。


「幽霊‥‥声‥‥」


ブツブツとつぶやいていた香織の難しい顔が、いきなりぱあっと明るくなった。


「‥‥!!たしか、美沙紀の家の前で工事してたじゃん?」

「え‥‥?そうだけど‥‥?」

「実はさ、あそこで働いてる人ってホームレスでさ、夜はあの機械の中で寝てるんだよ」

「!!」

「だから、美沙紀の聞いた声って、その人の寝言じゃない!?」

「でも、寝言で『返せ』とか『渡せ』って言うかなあ‥‥?」


私が訊くと、今度は凛が答えてくれた。


「それはさ、きっと借金とかしてるんじゃないかな、その人‥‥」

「そっか!!」

「そうだよ、凛。美沙紀、幽霊じゃなくてよかったじゃん~!!」


香織と凛がにっこり笑ってくる。

笑い返す私。

なんだ、そんなことだったのか。

あまりに単純な事だったので、拍子抜けしてしまった。

あれ、でも‥‥?


「それじゃあ‥‥、隣の家のおじさんが言ってたことは‥‥?」

「‥‥」

「‥‥おばさん、なんて言ってたんだっけ?」


香織が訊いてくる。


「えっと、『4時にたたき起こされて』って」

「それって、別におじさんが4時に見たってわけじゃないよね?」

「‥‥どういうこと?」
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